研究概要 |
研究代表者は、Human immunodeficiency virus(HIV)の薬剤耐性化を克服するために耐性ウイルスを含めたHIV-1のみならず、HIV-2にも効果を示す核酸誘導体、4'-ethyny1-2'-deoxynucleoside(4'-E-dN)を同定した。4'-E-dNは今までに報告のある主な薬剤耐性株(AZT、ddI、ddC、d4T、3-TC耐性株)に対しても強い抗ウイルス効果を維持しており、多剤併用療法(HAART)施行後問題となっている多剤耐性臨床分離HIVの複製も野生株同様に阻害した。特に4'-E-2'-deoxycytidine、4,-E-2'-deoxyadenosine(4'-E-dA)、4'-E-2'-deoxyribofuranosyl-2,6-diaminopurineが強い抗HIV効果を示した。これらの薬剤が核酸系逆転写酵素阻害剤として作用していることを明らかとした。この作用機序をさらに解明するために4'-E-dA耐性ウイルスの誘導を試みたところ、約80倍耐性をホすウイルスを分離することができた4'-E-dA耐性ウイルスの逆転写酵素領域の塩基配列を解析したところ、逆転写酵素領域にI142V/T165R/M184Vといった新規変異を見出した。4'-E-dAとその誘導体および3-TCに対してのみ交叉耐性を示した。種々の組み合わせの分子クローンを用いて解析したところ、T165RとM184Vが主な耐性責任変異であった。単一変異では耐性は獲得されていなかうた。これらアミノ酸変異部位は現在報告されている逆転写酵素立体構造においてすべてRT活性中心近傍に位置し、特にT165はM184と対をなしており、steric hindranceによって耐性化することを明らかとした。
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