研究概要 |
本研究の目的は分化型胃癌発生におけるPPARの意義を明らかにすることであり,既に提出した研究計画に基いて胃粘膜上皮のPPARα・PPARγの活性化〓COXの発現抑制〓アポトーシスの誘導〓胃癌の発生の抑制という経路が証明されることになれば,既に脂質・糖質代謝改善剤として使用されているbezafibrateなどのPPARαのリガンド・troglitazoneなどのPPARγのリガンドが胃癌の予防や治療に応用できる可能性も期待された.しかし免疫組織染色による内視鏡時の生検標本を用いた胃粘膜上皮でのPPAR,COX発現の検討において,正常胃粘膜・慢性活動性胃炎・萎縮性胃粘膜・腸上皮化生・分化型胃癌各段階での発現に差があるか否か検討したが,染色像に差は見られなかった.当初期待された結果が得られずこれ以上の検索は困難と判断した.そこでPPARと大腸癌・肝癌に関する報告が多数ある一方,報告がまだ数少ない肝炎(慢性C型肝炎・自己免疫性肝炎)との関わりについて調べることとした.本研究室にて作成した抗ヒトPPARα抗体・抗ヒトPPARγ抗体を用いた手術時切除肝・経皮的肝生検標本の免疫組織染色にて以下の結果を得た.PPARαの発現は肝細胞の細胞質に見られ,染色の度合はCH-C<AIH,陽性細胞はAIHはびまん性,CH-Cは門脈域近傍に存在する.一方PPARγの発現は肝細胞の細胞質よりも核に強く,染色の度合はCH-C=AIH,陽性細胞はいずれもびまん性で,門脈域あるいは脂肪細胞の分布とも関連はない.この結果の意味付けを今後の更なる研究で明らかにしていきたい.
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