研究概要 |
本研究では核内転写因子であるPPARγのヒト膵癌における発現およびそのリガンドによる増殖抑制効果について検討をおこなった。まずヒト膵癌細胞株(Capan-1,Panc-1,BxPC-3)を用いてPPARγの発現をRT-RCR法、Northrn blot法、Western blot法にて検討した結果、いずれの細胞株においてもPPARγの発現が認められた.さらに手術標本を用いてPPARγの発現を免疫染色にて検討した結果、癌部での発現が認められた。ついでPPARγリガンド(トリグリタゾン、ピオグリタゾン、15deoxyΔ^<12,14>prostaglandin J2)を用いての細胞増殖抑制効果に関する検討を行った。その結果、上記のいずれの細胞株においても濃度依存的な増殖抑制効果が認められた。その増殖抑制効果の機序として、細胞周期への関与を検討したところ、G1arrestが確認された。そこで、細胞周期のregulatorであるCDK inhibitor p27の発現をWestern blot法にて検討したところ、経時的な発現の増強が認められた。また、PPARγリガンド投与に伴う癌細胞の形質変化に関する検討として、β-カテニン、E-カドヘリン、MMP-2,9などの遺伝子の発現に及ぼす影響を現在検討中である。増殖抑制におけるアポトーシスの関与についても各種方法により検討したが、アポトーシスの関与は明らかではなかった。In vitroにおけるPPARγリガンドによるヒト膵癌の増殖抑制効果は、、ヒト膵癌の治療において期待されるものと考えられる。
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