研究概要 |
我々はこれまでに、岩村らの作成したSUIT cell line系(SUIT-2,S2-007,S2-013,S2-020,S2-028,S2-CP9,S2-VP10)を用いてezrinの発現量と転移能との関連を検討し、親株SUIT-2 cellから派生したsublineである高転移株S2-CP9とS2-VP10でのezrinの高発現を報告した。今回、我々は他のERM familyであるradixinとmoesinについて、RT-PCR法、Northern blot法、Western blot法にてその発現を検討した。 まず、moesinの発現については、RT-PCR法ではいずれのsublineにも発現を確認したが、Northern blot法ではS2-020とS2-CP9のみにその発現を確認した。Western blot法ではS2-028、S2-VP10以外のものに、陽性bandを確認した。その発現量については、S2-020とS2-CP9ではSUIT-2,S2-007,S2-013よりも幾分増強しているように思われたが有意ではなかった。 一方、radixinの発現については、RT-PCR法ではいずれのsublineにも発現を確認したが、Northern blot法ではいずれのsublineにも陽性bandを確認できなかった。これにより、このcell line系ではradixinの発現量は少ないことが予想されたが、Western blot法ではS2-028、S2-VP10以外のものに、陽性bandを確認した。その発現量については、有為な差を認めなかった。 以上より、S2-028、S2-VP10ではradixinとmoesinの発現は極めて低下していることが確認された。また、radixinとmoesinの発現量は、ezrinの発現量や癌転移能と相関関保を認めず、radixinとmoesinは癌転移能に関与していないと考えられた。 現在、ezrin cDNAの両端にXho I/Sal Iの認識配列を持たせたcDNAクローンを作成し、これを発現ベクターpSIのクローニングサイトにXho I/Sal Iを用いて挿入し、低転移株であるS2-028へtransfectionしてその発現を観察する実験に取りかかっている最中である。引き続き、同細胞株のヌードマウスへの移植により転移能の変化を検討する予定である。
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