本研究では本年度、hB1Fタンパク質の発現レベルの検討を癌組織・非癌組織を用いて行い、肝癌細胞株で検出されている二種類のhB1FmRNAの構造解析を行った。 昨年抗原として用いた部位より3'側に位置するペプチドを用いてhB1Fに対する抗体を作成し、癌組織・非癌組織間のhB1Fタンパク質の発現量を比較するためにウエスタンブロッティンを行ったところ、昨年同様hB1Fの明瞭なバンド及び明らかな量的差違は検出されなかった。依然として抗体の力価に問題がある可能性もあるものの、癌組織・非癌組織のいずれに於いてもhB1Fタンパク質の発現レベルは非常に低いものと推測される。 肝癌細胞株HepG2に於いて長さの異なる二種類のmRNAが検出されるが、これらの構造を検討した。RACE(Rapid amplification of cDNA end)法を用いてmRNAの全長をクローニングし全塩基配列を決定後比較した。二種の長さのmRNAの違いは3'非翻訳領域の長さであり、翻訳されるcDNAには違いが無いと予想された。また、癌組織・非癌組織を用いたhB1F mRNAのノザンブロッティングでは、いずれかのmRNAが癌組織特異的に増加しているという顕著な傾向は認められなかったが、肝癌細胞株では短いmRNAが優位に発現していた。mRNAの3'非翻訳領域はmRNAの安定性に関与している場合があり、癌化とhB1F mRNAの安定性の変化との関連をさらに解析する必要があると思われる。
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