研究概要 |
最近,脱共役蛋白(Uncoupling Protein : UCP)は新たなエネルギー代謝関連蛋白として,肥満・糖尿病・筋肉における熱産生などの多くの分野において注目されている.UCP1および2の遺伝子変異が高度の肥満と糖尿病を引き起こすことが報告されている. 本研究では,UPC4およびBrain Mitochondrial Carrier Protein1(BMCP1あるいはUPC5)が,mRNAレベルでほぼ全脳において高い発現があることを確認した.また,これらの分子の遺伝子多型に基づく脳内でのエネルギー代謝の変化が,アルツハイマー病発症の危険因子あるいは防御因子となる可能性があると仮説を立て,これら二つの分子の遺伝多型のスクリーニングを行った.その結果,アルツハイマー病群(80例)とコントロール群(30例)においてBMCP1(9個のエクソン)およびUPC4(8個のエクソン)のcording regionにはアミノ酸置換を伴う遺伝子多型は見出されなかった.また,エクソン近傍のスプライシングや転写に影響を与える部位にも遺伝子多型はなかった.両蛋白は,高度に保存された蛋白質であると考えられた. 代表的なUCPであるUPC2のプロモーター領域の多型が,糖尿病発症の危険因子であることが報告されており,UCPの発現量が疾患に結びつくことが判明した、今後,脳内で高発現しているBMCP1およびUPC4においても,発現に影響を与えるプロモーター領域の多型がないかどうか検索したり,実験的にBMCP1およびUPC4の発現量を変化させた際の細胞内代謝の変化,特にアミロイドベータ蛋白やタウ蛋白に関連した細胞内代謝の変化を検討する必要があると考えられる.
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