研究概要 |
ウシ脳ガングリオシド注射後軸索型Guillain-Barre症候群のモデル動物の樹立を試みた. (1)ウサギ13羽にイタリアで実際に使用されていたウシ脳ガングリオシド2.5mg,keyhole limpet hemocyanin(KLH)1mg,Freund完全アジュバント(FCA)を皮下注射もしくは腹腔内注射を3週に1回感作を繰り返した.初回感作後5-11週で13羽全例に運動麻痺が生じた.発症からピークに達するまでの期間は4日から13日であり,Guillain-Barre症候群同様急性発症の様式をとった.末梢神経の大径有髄線維は著しく脱落し,ワーラー様の変性を呈していた.リンパ球の浸潤や脱髄像は見られなかった.軸索型Guillain-Barre症候群と同様の病理組織学的所見を呈していた.これに対して,アジュバント対照群10羽では24週まで全例発症しなかった.(2)ウシ脳ガングリオシド感作ウサギでは,初回感作後2週ないし3週でIgMクラスの抗GM1抗体が誘導され,3週ないし4週でIgGヘクラススイッチし,クラススイッチ後3週程度でIgG抗GM1抗体はピークに達した.IgG抗GM1抗体がピークに達してから1週以内に運動麻痺が発症する傾向がみられた.(3)ウサギ末梢神経よりFolch分配によりガングリオシド画分を抽出した.薄層クロマトグラム免疫染色にて,発症ウサギの血漿IgGが認識するバンドは標準GM1と同様の移動度を示した.さらに,発症ウサギの血漿IgGが認識するバンドを薄層クロマトグラム-blotting後に質量分析を行い,GM1に由来するシグナルが検出された.以上より,発症ウサギの血漿IgGが認識する分子がウサギ末梢神経に発現するGM1であることを確認した.ウシ脳ガングリオシドを感作して発症したウサギの末梢神経病変は脱髄ではなく軸索変性を主体とした.
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