研究概要 |
重症筋無力症(MG)の原因となるアセチルコリン受容体抗体(AChRα)に対する自己反応性T細胞の解析は日本人MG患者ではほとんど行われていない。AChRαにはP3A exonの有無により2つのサブタイプがあり、MG発症の原因となる異常胸腺においてはこの2つのサブタイプの割合が変化することが知られており、病因との関連が推測される。両者のリコンビナント蛋白(rP3A+,rP3A-)を精製し抗原として、MGと正常人のリンパ球に加え、7日間培養しT細胞の増殖反応を測定した。MGの78%、正常人の71%でrP3A+に対して反応を示し、特にMGの21%でrP3A+にのみ反応し、P3A exonに対する特異的な反応が推測された。これらの自己反応性T細胞はCD4陽性でHLA-DR(一部HLA-DQ)拘束性であった。またDRB1^*0405/^*0410-DQB1^*0401/^*0402を有するMG患者でよりrP3A+に対する反応が顕著であった。 次にrP3A+に対するT cell lineを樹立し、P3A exon領域における合成ペプチドに対する反応をサイトカイン(IFNγ)の発現で検討した。正常人では特異的な反応は観察されなかったが、MGの35%でP3A exonの一部でIFNγの発現を認め、T細胞エピトープと考えられた。これらの症例はいずれも胸腺腫の術後であり、高齢発症、全身型であった。DQB1^*0402を有する患者が多く、すでに報告したHLA class IIとの臨床像と関連している(J Neurol Sci, 2001)。胸腺腫を合併するMGは長期にわたるステロイド治療が必要であり、副作用の少ない選択的な免疫療法を開発していく上で基礎的なデータとなる。
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