研究概要 |
近年、胎盤から多量のレプチンが分泌されていることが明らかとなり、レプチンの発生分化への関与が示唆されている。しかし、これまでレプチンの循環器系への分化誘導作用の報告はない。申告者は本研究課題に取り組み、RT-PCR法を用いて、レプチンレセプター遺伝子がラット心筋細胞にも発現していること。また、レプチンレセプターのアイソフォームは5種類存在することから、同研究方法を用いて、それぞれのアイソフォームの遺伝子発現をラット心筋細胞発生過程の各段階において調べ、レプチンレセプターのアイソフォーム遺伝子発現量が変わることを見い出している。また、レプチンレセプターのシグナル伝達因子はSTAT,MAPK系によることが報告されている。心筋細胞の分化誘導にはMAPK系のシグナル伝達の関与することも明らかとなっていることから、現在、レプチンの心筋細胞分化誘導へのシグナル伝達をも含めた、レプチンの直接的な作用の検討中である。さらに、心筋細胞分化に関与する転写因子としてNFAT3,GATA-4,MyoDなどが知られていることから、レプチンがこれらの因子とどのように関わる転写因子を活性化するかを検討中である。これらの基礎的検討により、レプチンの心筋細胞分化誘導への関与を分子レベルで明らかにし、ひいては心筋におけるレプチンのマスターレギュレターとしての役割を解明し、心筋細胞分化誘導機序の一端を知るための研究を継続している。
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