研究概要 |
抗癌剤タキソールはアポトーシス抑止機能を持つBcl族蛋白をセリンリン酸化し、アポトーシス抑止機能を喪失させることにより、アポトーシスを誘導する。我々は新生仔ラット培養心筋細胞を48時間の血清除去やタキソールで刺激し、アポトーシスを誘導した。カルシニューリンはこのアポトーシスの過程において、関与していた。カルシニューリンの阻害薬CsA、FK506存在下に、血清除去およびタキソールによりアポトーシスの誘導を観察したところ、アポトーシスは一部抑制された。アポトーシスの誘導の評価はMTT assayによる細胞のviability、DNAのladdering、in situ TUNEL assay、Caspase3活性の測定により行った。次に、Dominant negative型のカルシニューリン遺伝子およびConstititive active型のカルシニューリン遺伝子をアデノウイルスベクターで心筋細胞に導入し、同様に血清除去およびタキソール刺激によるアポトーシスの誘導を観察した。さらに、培養心筋細胞が血清除去やタキソール除去でアポトーシスに陥ること、およびCsA、FK506の前処置により、非常に強いアポトーシスが誘導されることを確認した。血清除去やタキソールによりアポトーシス抑止機能を持つBcl族蛋白(Bcl-2,Bcl-XL,Mcl-1)のリン酸化状態の変化をWestern blot法で観察したところ、カルシニューリンはBcl族蛋白の脱リン酸化を介してアポトーシスを制御していた。同様にCsA、FK506の前処置やDominant negative型、Constititive active型のカルシニューリン遺伝子導入を行った後に、血清除去やタキソールによるアポトーシス誘導を行い、Bcl族蛋白(Bcl-2,Bcl-XL,Mcl-1)のリン酸化の状態を観察したところ、カルシニューリンはBcl族蛋白の脱リン酸化を介してアポトーシスを制御していた。
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