研究概要 |
研究目的:摘出灌流心の虚血再灌流モデルを用いて、Ischemic(IP)およびCa preconditioning(CP)を施行、蛍光イオン指示薬を用いて細胞内Ca動態を観察した。CPの心筋保護機序として虚血・再灌流における細胞内Ca過負荷の抑制効果ならびに抗不整脈効果の有無を検討した。方法:1)摘出灌流心標本と血行動態300-350gの雄性Sprague-Dawleyラット摘出心をLangendorff法、Ca^<2+> 2mMのHEPES-Tyrode液にて定流灌流した。冠灌流量を10%に減少させるlow-flow ischemiaを誘発し、同時にペーシングを加えた。左室圧・心電図をモニターした。2)細胞内Ca^<2+>動態([Ca^<2+>]I)の測定蛍光指示薬4μM fura-2を経冠動脈的に心筋に負荷し,340nm/380nmのUV励起光による500nmの蛍光強度比を光ファイバー照射測光ユニット(日本分光CAF110)を用いて測定。3)Ca preconditioningの作成 高Ca溶液による(CPHC):灌流条件を通常のTyrode溶液から高Ca,Tyrode溶液(Ca^<2+>:3.5mM)に1分間変換し、再び通常の灌流液に戻した。低Na溶液による(CPLN):灌流液をTyrode溶液から、低Na,Tyrode溶液(Na^+:70mM,Tris:70mMに調整)に1分間変換した。低Na灌流によりreverse mode Na/Ca交換系が刺激され、Caの細胞内流入が起こる。4)実験プロトコール。4群に分けて検討。虚血10分、再灌流15分の対照群(n=6)に対して、CPHC群(n=6)、CPLN群(n=6)ともにCa preconditioningを2回施行後、虚血10分、再灌流15分施行。さらにIP群(n=6)としてIschemic preconditioningを2回施行後、虚血再灌流を行った。結果:CPHC群、CPLN群、IP群いずれもpreconditioningにより、一過性の細胞内Caの上昇がみられた。虚血10分及び再灌流1分の細胞内Caの上昇率は対照群の107.7±9.4%、57.1±13.7%に対して、IP群61.1±3.0%(p<0.01)、22.4±3.9%(p<0.05)に抑制された。CPLN群、CPHC群においても再灌流1分で21.5±10.1%(p<0.05)、23.8±7.4%(p<0.05)と抑制効果がみられた。いずれのpreconditioning群においても、再灌流後の不整脈発生頻度の減少と、rate-pressure productの回復傾向がみられた。結論:CPの保護効果として細胞内Ca過負荷の軽減が一部関与する。またIschcmic preconditioningの心筋保護効果発現のtriggerとして、一過性の細胞内Ca上昇が重要と思われた。
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