研究概要 |
(1)圧負荷・拡張不全心モデルの作成とその評価 ウィスター系ラットの腎動脈直上の腹部大動脈を縮窄することにより圧負荷モデルを作製し、左頸動脈へのカテーテル留置にて3,7,14,28日後の血圧上昇を確認した。さらに血行動態評価、心機能評価としてミラーカテーテルやドップラー心エコーを用いて左室拡張末期圧の上昇、左室肥大、拡張障害を確認し、圧負荷・拡張不全心モデルを作成した。さらに心リモデリングの評価としてアザン染色などの組織染色、また細胞増殖、炎症性細胞浸潤の評価としてBrdU, ED-1の免疫組織染色を行い、増殖細胞の経時的変化を定量評価した。 (2)酸化ストレスとNFκ-B関与の評価(Angiotensin IIの関与も含めて) 酸化ストレスとのNFκ-B活性化にAngiotensin II(A-II)が関与するという報告があり、我々の圧負荷モデルにおいてもA-IIを介する細胞増殖、炎症性細胞浸潤が予想される。前述のモデルに血圧に影響を与えないA-II receptor1 blocker(ARB)を負荷し細胞増殖、炎症性細胞浸潤を比較検討した。その結果、投薬群にて細胞増殖、炎症性細胞浸潤は3,7日後に明らかに抑制されており、さらに投薬群において14日目の血管周囲線維化の抑制が確認された。この結果からA-IIを介する炎症機転を抑制することにより心線維化を抑制しうることが証明された。この結果をもとに今後は同モデルにおいて酸化ストレスとNFκ-B活性化の比較検討を行う予定である。 心筋酸化ストレスの評価としては電子スピン共鳴法による活性酸素産生の測定、酸化ストレスの指標として抗4-HNE抗体による免疫組織染色を行い、また、NFκ-B活性化はリン酸化Iκ-Bの免疫組織法により組織学的に検討し、ゲルシフトアッセイにより定量評価する方針である。
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