研究概要 |
proton(1H)-magnetic resonance spectroscopy(MRS)では、神経細胞活動を反映するN-acetylaspartate(NAA)、髄鞘動態を反映するcholine(Cho),creatine(Cr)の代謝情報を得られる。本研究の目的は、MRSが小児中枢神経白質変性症、特に髄鞘形成不全および脱髄性疾患において、その病態をどこまで反映しうるかを検討することである。平成13年度はMRI上鑑別の困難な中枢神経白質変性症、特に従来のcreatine(Cr)による半定量的1H-MRS上特異なパターンを呈するPelizaeus-Merzbacher病(PMD)に対し、short echo time法を用いた定量的解析を行った。 対象は、FISH法によるPLP遺伝子の解析からPLPの重複が認められた5例のPMD患児(4-11歳)である。保護者からMRS検査の承諾を得たうえ、GE社製Signa Horizon 1.5Tを使用し、PRESS法;TR/TE/NEX:5000/30/64、半値幅;<4Hz,関心領域;parietal white matterで施行した。raw dataをLCModelに転送し、代謝物質の定量評価を行った。正常例との有意差をMann Whitney's U testを用いて検討した。PMD症例では正常例に比し、NAA,Cr,myo-Inositol(mI)の上昇を認めた。NAA+14%(p<0.01),Cr+39%(p<0.001),mI+27%(p<0.01)であった。choline(Cho)には有意差は認めなかった。 PLP遺伝子重複を有するPMD患児において、脱髄性疾患とは異なる代謝物質の定量結果を得た。Cr,mIの上昇はactive gliosisを、NAAの上昇はincreased oligodendrocyte progenitor cellを反映していると考えられた。
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