研究概要 |
ボリコーム遺伝子群は、複合体を形成し、染色体の高次構造を介してHox遺伝子群を中心とした遺伝子発現を負に制御する。われわれはポリコーム遺伝子の一種であるrae28の欠損マウスを用いてrae28の造血への関与について検討してきた。その結果、欠損マウスの胎児肝細胞を用いたコロニーアッセイ、移植実験(competition assay)の結果からrae28は造血の維持に必須であることを明らかにした。今年度はさらにrae28欠損幹細胞をマウスにいったん移植し、さらにこのマウスから骨髄細胞を取りだして移植実験を行なった。その結果よりrae28欠損幹細胞は自己複製能力が1/15に低下していることを明らかにした。このことより造血を維持するための造血幹細胞の機能にrae28は重要な働きをしていることが判明した。さらにその機序を探るため造血初期に作用する各種サイトカインに対する反応性をsingle cytokine colony assayを用いて検討した。その結果調べたすべてのサイトカイン(SCF, IL-3, GM-CSF, FLT3L, IL-7, IL-6, TPO)に対する反応性が極度に低下していることが明らかとなった。他のポリコーム遺伝子欠損細胞ではサイトカインに対する反応性は落ちているものの、サイトカインのシグナル伝達系には異常がないことが明らかにされていることから、現在われわれは細胞周期に関与しているタンパクであるサイクリン、サイクリン依存性キナーゼ、それらのインヒビターなどへのrae28欠損の影響について検討中である。
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