研究概要 |
神経芽腫は自然退縮するものから致死的経過をとるものまで、様々な腫瘍動態をしめす。特に乳児神経芽腫では分子遺伝学的に、乳児期以降例とは異なる独自の予後不良あるいは良好因子が存在するのではないか、また、自然退縮するような乳児神経芽腫には分化やアポトーシスに関与する特徴的な染色体異常があるのではないかと考え、乳児例に特徴的な染色体異常の検索を行った。神経芽腫の乳児例35例に対してCGH法を用いて、染色体異常の検索を行った。最も多く見られた染色体異常は17番染色体で、全体の43%に見られた。全17番染色体のgainは23%に、17q gainは20%に、1plossと2p gainがそれぞれ17%に見られた。11q lossと14q lossはそれぞれ6%と3%にしか見られなかった。17q gainはaneuploidに比べてdiploidの症例に多く見られた(P=0.006)。さらに、全17番染色体のgainはdiploidの症例やMYCN増幅のあるような予後不良症例には認められなかった。病理所見で自然退縮像は検索した17例中9例に見られ、これらの自然退縮症例には長腕、短腕の部分的な異常(例えば17q gain,1p loss,2p gain,11q loss,14q loss)は見られなかった。17q染色体には神経芽腫の進展に関する遺伝子が存在する可能性が示唆された。これらの結果は過去に報告されている、年長児神経芽腫例の結果とは、若干異なる結果であり、乳児例の特異性が示された。
|