研究概要 |
今回我々は,サイトカインを実験的に創に散布し,線維芽細胞の増殖および創収縮について検討した。方法は,実験動物にラットを用い,その背部に2×2cmの皮膚欠損創を作成し,その欠損部に人工真皮(テルダーミス)を置き,b-FGFを投与した群,PDGFを投与した群,VEGFを投与した群を作成し,対照群は生食を投与した。投与後は,創の湿潤環境を保つため,チュールガーゼ(ソフラチュール)に抗生剤含有軟膏(バラマイシン軟膏)を塗布したものを貼付し,ガーゼで覆った後,テープ固定とした。ガーゼ交換は毎日行ったが,消毒は行わず,チュールガーゼと軟膏の交換のみ行った。これを2週目まで創の大きさを検討し,1週目および2週目に組織学的検討を行った。しかし残念ながら,結果は有効と考えられた群は見出せなかった。投与量を変更して再度行ったが,b-FGFを投与した群が,他の群に比べ,肉芽形成が良好で,創収縮が顕著であったが,創収縮も統計学的に有意差は見られず,有効と考えられた群は見出せなかった。 今年度の実験結果を踏まえて,次年度は,b-FGFを投与した群を中心に,PDGFまたはVEGFを併用した群を作成し,また投与量,投与回数についても,今までは1回投与であったものを,2回以上投与する群も作成し,検討を行う予定である。また,他のサイトカイン(EGF,TGFなど)についても、同様な方法で投与を試み,有効なものはないか,検討する予定である。
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