研究概要 |
T細胞株STO-2由来の好酸球遊走因子(Ecalectin)は,323個のアミノ酸からなるβ-galactoside結合性を示すアニマルレクチン,galectin familyの一つgalectin-9であることが明らかにされた。Ecalectin/galectin-9はリンパ節や脾臓,胸腺などの免疫担当組織に多く発現し,その機能は多彩である。予備実験において好酸球性肺炎や木村氏病の病変局所では免疫組織染色によりEcalectin/galectin-9が陽性に染まる細胞が認められることが明らかにされてきた。しかしながら、皮膚局所での発現は明らかではない。 ポリクローナル抗Ecalectin/galectin-9抗体を利用して正常皮膚およびアトピー性皮膚炎における発現を,さらに疾患コントロールとして尋常性乾癬における発現も加え,免疫組織化学染色にて検討した。正常皮膚では表皮全層に均一にEcalectin/galectin-9の発現が,毛包・脂腺でもその発現が認められた。正常表皮の真皮浅層には明らかに染まる細胞はみられなかった。また、年齢や皮膚の場所による発現の差は認められなかった。アトピー性皮膚炎の表皮細胞でもEcalectin/galectin-9の発現がみられたが、表皮の下層や中層で強く発現するもの,細胞間浮腫をみる部位で発現が弱くなるものといった不均一な発現であった。真皮浅層の細胞で発現している細胞も認めたが、真皮の好酸球の浸潤とは一致していない。尋常性乾癬でも表皮細胞の発現の不均一性を認めたが,アトピー性皮膚炎とは異なった発現であった。 Ecalectin/galectin-9は表皮細胞で発現しているが、表皮の肥厚を示すアトピー性皮膚炎や尋常性乾癬では、表皮細胞の増殖と細胞間浮腫をみるアトピー性皮膚炎では細胞接着に何らかの関連が示唆された。
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