本研究の平成13年度における目標は、(1)昨年度製作したXYZおよびヨー・ピッチ可変の5軸光学台とインパットオシレーター(94GHz、300mW)を用いて、その出力について範囲と強度を調べ、(2)さらに、スライスした試料(ウシ肝臓肉片)に電磁波を照射し、熱効果による変性の様子を調べることであった。 (1)の研究に関しては、テフロンロッドアンテナと水負荷による出力測定装置を製作し、これによる出力測定を行った。これによる実験結果は、先年調査した福井大学ジャイロトロンFU-IV(302GHzロッドアンテナ使用時、2〜3W)で得られたものとほぼ同様であり、大出力ミリ波・サブミリ波光源を用いた生体照射の基礎実験として、低出力ながら簡便な装置を用いて実験可能であるとわかった。 (2)の研究に関しては、最初テフロンロッドアンテナによる照射を試みたが、低出力なために、試料をわずかに熱変性させるのに30分以上かかり効率が悪かった。このため、試料表面を厚さ0.3mm〜3mmのテフロンシートでカバーして導波管出口部を密着させて照射し、さらに試料を温度コントロールしながら、テフロンの厚みと時間、ならびに周辺温度による熱変性について実験した。この方法によると、最短15秒程度で試料を変性させることが可能であった。これと並行して計算機シミュレーションにより、誘電率の変化によるサブミリ波の光路と熱変性の関係を検討した。また、電磁波の生体内進入を理論的に把握するために、ミリ波における生体の誘電率測定を開始した。
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