研究概要 |
病院間の統合的医療情報管理を行うにあたり、大きな問題となるのはプライバシーの確保である。本研究を行うために安全性の確保が最優先であり、平成12年度よりセキュリティシステムの構築に関して研究をすすめた。セキュリティ通信に使用したシステムはISCL(Integrated Secure Communication Layer:統合型セキュリティ通信規格)と呼ばれるもので、財団法人医療情報システム開発センター(MEDIS-DC)の提唱する標準規格である。本研究では、ISDN 64Kbps,128Kbps,の二種類の回線を使用し、暗号化、メッセージ認証の各々単独使用と、暗号化とメッセージ認証の併用時での伝送時間を計測した。 結果はISDN回線を使用し64Kbpsの伝送速度を使用した場合、TCP/IPではDICOMでの伝送時間は274.3秒であったのに対し、ISCLを導入し、暗号化を行った場合は311.3秒を要し、メッセージ認証を行った場合は307.6秒を必要とした。暗号化及びメッセージ認証を両者ともに行った場合は、313.5秒を要し、これはISCLを使用しないDICOM通信に対して14.3%の増加となった。通信の安全性を確保するためには許容できる範囲であると考えた。また伝送速度をISDN回線の128Kbpsのもとで行った場合はDICOM通信のみでは137.6秒であったのに対し、ISCLを導入し、暗号化を行った場合は188.0秒を要し、メッセージ認証を行った場合は184.7秒を必要とした。暗号化及びメッセージ認証を両者ともに行った場合は、189.8秒を要し、これはISCLを使用しないDICOM通信に対して37.9%の増加となった。通常の通信ではISDNの64Kbpsを使用するため、安全性の確保は前述の14.3%となり、通信の安全性を確保するためには許容できる範囲であると考えた。 ISCLを使用することにより、個人のプライバシーを守るための安全なネットワークを確保することが可能であり、本研究での伝送時間を計測したところ、そのために必要な時間は14.3%の増加があったが、これは安全性を確保するためには許容できる範囲であると考えた。
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