実際に肝障害を有する症例に対して、当大学生命倫理委員会の認可の下、患者の了解を得られた症例に対して検討した。残念ながら有意差を検討するに十分な症例数には到達するまでは患者に了解してもらうことが出来なかったが、得られた症例では十分に局所肝予備能の分布を知ることができた。ただし、同一日時に^<99m>Tc製剤を2個使用するために、薬剤の選択は重要で、肝血流シンチグラフィには^<99m>TcRBCでは検査中に標識が外れてしまうため、後の検査時に尿路系の描出が見られた。^<99m>Tc-HSA-Dを使用すると、^<99m>Tc-RBCと比較して標識のフリー化が低く、その後の処理が容易であった。同一日に検査を施行すると、全体的に、LHL15は単独検査群と複合検査群でほぼ同様の値を呈するが、HH15(血中消失率)は複合検査群で低くなる傾向が強く、^<99m>Tc-HSA-Dのサブトラクションにより、多く引きすぎる傾向があると思われる。血中消失率と一般的な採血などによる肝機能検査との関連は見られなかったが、ICGと関連が見られた。肝血液量の低下に伴い血液消失率の低下が見られた。SPECT収集による肝予備能分布の立体的把握に関して、大まかな分布は得ることが可能で、OHPシートなどに打ち出したSPECTイメージとCTやMRI等とのオーバーラップが可能であった。ただし、再構成時に再構成厚や画像サイズ等の設定に注意が必要であった。また、シンチグラフィでは収集に時間がかかるため呼吸によるアーチファクトが生じ、絶対的な位置指定がやや困難で、肝表面近くの相対的低下が見られた。血流イメージのサブトラクションは可能で良好な局所肝予備能分布を反映しており、腫瘍等の局所分布を見るには十分であった。検査自体は平均100分と通常の核医学検査と比較して、約2.5倍と長く、今回経験した症例(平均年齢70.0歳)では検査中から検査後にかけて腰痛や肩痛を一過性に訴えることがあり、今後、検査機器等の進歩により時間を1/2程度(約60分程度)にまで短縮が可能であり、より患者に優しく施行することができると考える。
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