研究概要 |
試料の集積について。対照群(健常者群)では末梢血として60検体が得られたものの、精神分裂病患者群では25検体しか得られなかった。各サンプルからtotal RNAを抽出し、reverse transcriptional-polymerase chain reaction(RT-PCR)法を用いてMAG遺伝子第291番塩基〜第510番塩基(220base)を増幅した。さらに、この増幅産物を電気泳動により精製し、PE社ABI PRISM310を用いて塩基配列を読み取った。その結果、これまでに得られた検体について、塩基配列に変異は認められなかった。 Song Tangらは(J. Cell Biol, 138, 1355-1366, 1997)、ラットMAG遺伝子第118番アルギニンをアスパルギン酸に置換すると、シアル酸を介したMAGとneuronとの結合が低下し、軸索伸展抑制能が低下すると報告した。本研究はこの報告をもとに、ヒトMAG遺伝子における第118番アルギニンを含む220塩基対の配列を関心領域として、第118番アルギニン(CGT)における一塩基多型(single nucleotide polymorphism ; SNP)を検討するものであるが、健常者例においてこの配列に変異を認めなかったことから、ヒトMAG遺伝子第118番アルギニンは高度に保存されている可能性がある。しかし、この塩基配列が精神分裂病においても保たれているかは検体数が少なく、現時点で結論づけることは困難である。今後さらに検体の集積をすすめ、患者群におけるMAG遺伝子の変異を検討する予定である。
|