研究概要 |
アルコールに対する特異的な受容体の存在は不明である.しかし,アルコールによってmRNAが誘導されるいくつかの遺伝子が存在することから,アルコールの作用部位の1つが転写制御因子ではないかと仮定し,アルコールのNMDA受容体の転写制御機構について検討した.まず,ヒトNMDA受容体サブユニット遺伝子(NR)の転写調節流域約1.4kの塩基配列を決定した.この領域には,Sp1,CREBなどいくつかの転写調節因子が結合することが明らかとなった.次に,この領域を組み込んだgene reporter plasmidを作製し,培養細胞に導入した.その結果,神経栄養因子を添加した場合のみ転写活性の上昇が確認された..しかし,Sp1認識部位に変異を加えると活性の上昇は見られなかった.このことから,NR遺伝子の転写制御において,神経栄養因子とこれによりDNA結合が増加するSp1が重要であることが明らかとなった.次に,欠失により様々な長さのNR遺伝子転写領域を含むgene reporter plasmidを作製し,培養細胞に導入し,同時にアルコールを添加し,転写活性を比較した.その結果,アルコールによる転写活性の上昇に重要な領域が明らかとなった.そして現在,この領域に結合する転写因子の同定を行っている.
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