うつ病患者において、selective serotonin reuptake inhibitor(SSRI)であるfluvoxamine服用後の抑うつ症状の変化と不快な副作用についてprospectiveに評価し、ならびにSSRIの作用部位となるセロトニントランスポーター(5-HTT)遺伝子の第2イントロンのVNTR多型、プロモーター領域にある5HTTLPR多型とfluvoxamineの血中濃度との関連性を検討した。 対象は、昭和大学藤が丘病院精神神経科、昭和大学病院付属東病院精神科を受診し、DSM-IVにおいて大うつ病性障害に該当し、身体疾患に罹患していない患者40名(男性20名、女性20名、平均年齢47.14±12.97歳)である。 結果として、5-HTT遺伝子多型と副作用の関連は認められなかったが、5HTTLPR多型の違いによりHAM-D得点の減少の仕方に違いがあることが認められた。s/s型のHAMD得点は経時的に8週間後まで低下しつづけたが、s/l型とl/l型のHAM-D得点はs/s型に比べ4週目までは急速に低下したが、それ以降はほぼ変化は認められなかった。今回の研究では、Kimら、smeraldiらの多型による効果の違いは認められなかったが、経時的なfluvoxamineによる効果の予測因子の1つとして、5HTTLPR多型が挙げられるのではないかと考えた。 Fluvoxamineの服用2週間後の血中濃度は、有意差が認められ、Zanardiらの報告と同様に5HTTLPR多型において、s/s型の方が高値であったことは興味深い。5HTTLPRのL型対立遺伝子は、S型対立遺伝子と比較して約3倍転写活性が高いとされているので、5-HTT遺伝子多型が何らかの影響を与えている可能性が考慮された。しかしfluvoxamineの代謝には、cytochrome p450(CYP)1A2、CYP3A4、CYP2C19、CYP2D6などの薬物代謝酵素が関与するため、その点を考慮しなければいけない。今後薬物代謝酵素の遺伝子多型との関連を検討すべきである。
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