研究概要 |
胎生期の造血細胞は,胎生期のみに生じ成長とともに消失する胎仔型造血と胎生中期に生じ成体での骨髄における造血へつながる成体型造血に分類され,成体型造血の少なくとも一部の発生に血管の内皮細胞が関与していることが報告されている.1999年にBreierらにより血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor : VEGF)の受容体の一つであるFetal liver kinase-1(Flk-1)遺伝子の発現調節領域が同定された.申請者らは本研究においてこの発現調節領域の制御下に緑色蛍光蛋白(GFP)遺伝子を発現させ,マウス胚性幹細胞の試験管内分化系およびトランスジェニックマウスにおいてGFPの発現パターンを解析した.その結果GFPの発現は必ずしも内因性のFlk-1の発現と一致せず,特に胎生期のFlk-1陽性血管内皮細胞がGFP陰性と陽性の2つの集団に分かれることを見いだした.これら血管内皮細胞の造血能について検討したところ,造血細胞の前駆段階としての能力を備えた内皮細胞(hemogenic)とそのような能力を持たない内皮細胞(non-hemogenic)を含む集団に対応した.成体型造血に必須と考えられている転写因子の発現もGFP陰性集団に限局して発現を認めた.同様の結果はトランスジェニックマウスを用いた実験からも得られた(投稿中).このような内皮細胞の亜集団の存在はこれまで予想されていながら同定されていなかった.
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