研究概要 |
【目的】ホメオボックス遺伝子は61のアミノ酸からなるDNA binding domainを持つ転写因子であり,様々な細胞系列の分化や増殖に関与している。我々はこれまでにホメオボックス遺伝子DLX-7がある種の白血病細胞の増殖やアポトーシスの制御に関わっていることをアンチセンスの系,遺伝子導入の系を用いて明らかにしてきた。そこで今回、このDLX-7遺伝子の各種白血病患者での遺伝子発現を解析し,病型や臨床像との相関を解析した。【対象と方法】1.DLX7を強く発現している細胞株K562よりRNAを抽出し、Reverse transcriptaseによりcDNAを合成し、コントロールとした。2.上記cDNAを用い、蛍光測定法と超高速温度サイクルを結びつけた新たなPCRシステムであるLightCycler^<TM>システムを使用し、DLX7特異的プライマーにてPCRを行った。この際のLightCyclerの条件設定を決定し、PCRの対数直線領域の蛍光測定をすることにより定量分析を行った。3.急性骨髄性白血病を中心とした造血器悪性腫瘍の患者より単核球分離を行い、AGPC法にてRNAを抽出した。これらの臨床検体を用いて、上記2)で決定した条件によりDLX7の発現量の定量化を行った。【結果】急性骨髄性白血病の初診時患者検体32例について解析を行った。DLX-7遺伝子の有意な発現を10例に認めた。これらの白血病細胞は巨核球系,赤芽球系の抗原を発現しており,系列特異的である可能性が示唆された。また,臨床的には化学療法に抵抗性であり,予後因子としての可能性も考えられた。【結語】DLX-7遺伝子は一部の急性骨髄性白血病の患者検体でも発現しており,その生物学的特性を考える上で有用であると思われた。
|