研究概要 |
今年度、我々はES細胞から肝細胞様の細胞群をin vitroで分化誘導することを目的に実験を進めてきた。hanging drop culture systemを用いてembrioid body(EB)を作製した後、outgrowth cultureによりES細胞の分化誘導を試みた結果、免疫組織化学染色でalbumin陽性を示す三次元構築をもつ細胞群が分化することを突き止めた。この細胞群をRT-PCRで解析したところ、肝細胞のマーカーであるalbumin(ALB),α-fetoprotein(AFP),transthyretin(TTR),α-1-antitrypsin,glucose-6-phosphatase,および内胚葉マーカーであるhepatocyte nuclear factor(HNF)-3βの発現を認めた。さらに、電子顕微鏡を用いた形態学的解析では、細胞質内に多数のrough surfaced endoplasmic reticulum(ER),lysosomes,Golgiの存在が明らかとなったほか、cell-cell contact(desmosomes)およびbile canaliculus(BC)も確認された。これらの結果から、ES細胞から肝細胞が分化誘導できたことが強く示唆された。そこで、これらの細胞群を単離した後、放射線照射した129-Ola mouseに門脈内投与することによりin vivoでの生着能を検討した。移植した細胞群は肝臓内で1ヶ月にわたり長期生着を認めたのみならず、albumin合成能も保持されていた。これらの結果から、in vitroでES細胞から分化した肝細胞がin vivoでも機能的に生着可能であることが示され、肝細胞移植の新たな細胞供給源としての可能性を示すことができたと考えられる。今後さらなる研究により、より効率に肝細胞を分化誘導することができれば、臨床応用への可能性も開かれるものと思われる。
|