研究概要 |
【目的】われわれは炎症性サイトカインの過剰発現による炎症反応が小腸の虚血再灌流障害の原因であると報告してきたが,この炎症性サイトカインのシグナル伝達経路の上流にあるのがJNK,p38などのMitogen Activated Protein Kinase familyである.このJNK,p38の小腸虚血再灌流障害における病態生理学的意義を実験的に検討した.【方法】Wister系雄性ラットでSMAを30分間クランプし小腸虚血再灌流モデルとした.経時的に小腸を採取し,LL-Z1640-2(JNK,p38のdual inhibitor)投与群と非投与群において,組織学的検討(H.E.染色,TUNEL染色,活性化p38免疫組織染色)とともにRI kinase assayを行った.LL-Z1640-2は虚血約1時間前に経腹膜的に投与した.【結果】H.E.染色での組織障害は非投与群でParks分類grade5,LL-Z群でgrade2と抑制されていた.非投与群においてTUNEL染色,活性化p38免疫組織染色では,villae脱落部付近の粘膜上皮に一致してTUNEL陽性細胞及び活性化p38の発現が認められたが,LL-Z群ではこれらの変化がともに抑制されていた.kinase assayにおいては非投与群で再灌流後30分をピークにJNKで虚血前の約10倍,p38で約2倍の活性が認められた.LL-Z群ではJNK,p38ともに活性が抑制されていた.【考案】小腸の虚血再灌流障害でJNK,p38活性化,Apoptpsisが重要な役割を担っていることが示唆された.
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