研究概要 |
凍結保存による同種食道移植の基礎的研究 本研究では,消化管に対する凍結保存法の応用の可能性を基礎的に検討分析し,同種食道移植という新たな食道再建術の開発を目的としており,具体的には,平成12年度末までに食道の凍結保存法を確立し,さらに凍結保存した同種食道を用いて移植実験を行う予定であった. 0.予備実験 平成10年度より我々は,予備実験を開始した.ブタあるいはウシの食道を屠殺場で入手し,それを5cm大の大きさにしたものを用いて凍結実験,保存実験,解凍実験を行った.平成12年度も基礎研究に入る前にそれらを継続した.凍結という特殊な状態の特性から移植片に起こる変化を捉え,有用なものと有害なものとに分けた.それらから検討した結果,凍結に関してはプログラムドフリーザーを用いて20度から-20度までの間を-1度/分で凍結させるのが良いことがわかった.しかし,これについても凍結パックに入れる移植片の個数や保存液の容量によって潜熱の出方が変わってしまったり,室温によっても全体の状態が変わってしまうなどの微妙な問題があることがわかった.具体的には,凍結・解凍時の組織構造の破壊・崩壊についてH.E.染色により検討したが,プログラムドフリーザーを用いた場合には,組織構造はよく保たれていた.さらにviabilityに関しても検討した.主にBrdUを中心に調べたが,解凍した移植片をBrdUでラベルする方法は一般的には確立されていない.恐らく37〜40度の恒温槽で温度を一定に保ちながら3気圧で加圧し,3時間,移植片をBrdUに曝す方法が良いと考えられたが,未だ確証は得られていない. この予備実験を行っただけで,ラットの食道を用いた基礎研究や移植実験までは行えなかった.引き続き実験を行って行く予定である.
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