研究概要 |
実験的に回盲部合併あるいは温存の小腸大量切除を行い、術後高カロリー輸液を行わず、術後栄養(固形飼料、成分栄養)の違いによる体重変化やインスリン様成長因子(IGF-1)投与の効果を検討した。 6週令の雄性Wistarラットを用いて、トライツ靱帯より5cm肛門側からバウヒン弁より5cm口側までの回盲部温存小腸大量切除(SBR)、およびトライツ靱帯より10cm肛門側からバウヒン弁より1cm肛門側までの回盲部合併小腸大量切除(SBR+ICV)を行い、術後の経口栄養として固形飼料(N)、エレンタール(E)、エレンタール+20%イントラリポス(E+L,9:1)を投与し、体重変化を比較検討し、IGF-1投与の効果について腸管上皮の再生、体重変化、生存期間を検討した。 SBR1週間後の体重は固形飼料で1.9%(N)しか減少しなかったが、SBR+ICVでは29%(N)の体重減少で有意差がみられた(p<0.01)。SBR+ICV後、成分栄養を用いると23%(E),20%(E+L)と改善がみられ、NとE+Lで有意差がみられた(p<0.05)。腸管上皮の再生をBromodeoxyuridine(BrdU)染色でみると、SBR後は腸管上皮細胞の44%が陽性であったが、SBR+ICV後は4%しか陽性を示さず、有意な腸管上皮の再生抑制がみられた(p<0.01)。ところが、SBR+ICV後にIGF-1を持続投与すると42%まで陽性細胞が増加し、上皮再生の抑制が有意に改善された(p<0.01)。また、SBR後にIGF-1を投与すると0.1%の体重増加がみられ、SBR+ICVにIGF-1を投与すると19%(N)、12.5%(E+L)とそれぞれの飼料で有意に体重減少が抑制された(p<0.01,p<0.05)。また、SBR+ICV後、E+Lで栄養し、IGF-1の有無で生存期間をみると、IGF-1(-)では平均8日間の生存で、IGF-1(+)では58日間の生存が得られた(p<0.05)。 成分栄養(特に脂肪成分を含んだもの)に代えると体重減少が有意に抑制され、IGF-1を投与すると、体重変化、腸管上皮の再生、生存期間が有意小腸大量切除に回盲部切除を加えると、体重および腸管上皮の再生が有意に減少したが、術後の栄養を固形飼料からに改善された。このことから、回盲部を含めた腸管大量切除に対する脂肪を含んだ成分栄養、IGF-1投与の有用性が示唆された。
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