研究概要 |
非小細胞肺癌の抗癌剤(タキサンを含めた)耐性に関連する蛋白質についての報告は多数あるが、非小細胞肺癌症例に共通した抗癌剤耐性因子となる蛋白質の報告は少ない。この点を検討するため以下の実験を行なった。 1.当院における、1998年12月〜2001年4月までの肺癌切除例のうち、抗癌剤感受性の測定が成功し,かつ検体が入手可能な症例が89例存在した.臨床的には試験結果の評価を、抑制率50%をカットオフ値として有効・無効判定としている.【方法】1998年12月〜2001年4月に当院にて切除した原発性肺癌症例で、抗癌剤感受性試験(CD-DST法)にて抗癌剤感受性を測定しえた90例について、アポトーシスや腫瘍増殖、薬剤代謝に関連する蛋白質の発現の有無と抗癌剤感受性との関係を統計学的に検討した。感受性測定に用いた抗癌剤はCDDP,DOC。発現を調べた蛋白はp53,bcl-2,Ki-67,p-Gp。蛋白発現の判定は、パラフィン包埋腫瘍切片の免疫染色で行なった。蛋白発現の判定は、腫瘍成分が全体の20%以上免疫染色される場合を発現(+)とした。有意差検定にはMann WhitneyのU検定を用いた。【結果・考察】今回検討した蛋白と抗癌剤感受性との間に統計学的に有意な関係は証明されず、この結果からは抗癌剤耐性を単一の要素で説明し得ない可能性が示唆された. 2.グルタチオンは抗癌剤代謝に重要とされているが,細胞株にグルタチオンの産生律速酵素であるγGCSに対するリボザイムを遺伝子導入し,遺伝子導入株のγGCS発現抑制の程度および抗癌剤感受性について精査中である.
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