研究概要 |
[目的]パーキンソン病に対する視床下核(STN)の高頻度電気刺激術が、STNの破壊術と同様な効果をもたらす機構については解明されていない。一般にパーキンソン病の無動・寡動などの症状は、STNやその興奮性入力を受ける大脳基底核の出力核の過剰な活動に起因すると考えられ、その出力核の過剰な活動を抑制することがパーキンソン病の症状の緩解につながると推測されている。そこで、STNの高頻度電気刺激術の作用機序を解明するために、同核の高頻度電気刺激に対する大脳基底核の出力核の応答様式を明らかにすることが必要であるため本研究を行った。 [方法]生後14日目〜21日目のラットを用い、視床下核と黒質網様部(SNr)を含む傍矢状断の脳スライス標本(厚さ300μm)を作成した。STNのトレイン電気刺激(0.1ms duration, <100μA,5train, 50〜200Hz)に対するSNrの細胞の応答をホールセル・パッチクランプ法を用いて記録した。 [結果]SNr(n=45)と黒質緻密部(SNc, n=13)ドパミン細胞とは、自発発火頻度、内向き整流特性の有無等を基準として判別した。STNの単発電気刺激に対するSNrの後シナプス電流は、早いグルタミン酸電流とそれに続くGABA性電流を認めた。STNのトレイン電気刺激に対するSNrの応答は、刺激間隔<7〜10msで追従しなくなる傾向があった。また、この条件での刺激中において、膜電位が過分極方向にシフトする、over shootまでの閾値に達しない現象が観察された。 [結論]STNのトレイン刺激は、大脳基底核の出力核の応答を刺激頻度依存性に抑制する。STN-SNrシナプスは興奮性の投射であるため、STNの連続刺激は他の抑制性の作用機序を積極的に作用させることによって効果を発現することが示唆された。
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