研究概要 |
脳主幹動脈に対する血管内手術後の再狭窄には血管中膜の平滑筋細胞が内膜に遊走し増殖する内膜過形成が深く関与しており,同病態に関する遺伝子の転写因子としてNuclear factor (NF) -kBが注目されている.我々はラット頸動脈バルーン損傷モデルを用いてNF-kBの関与を研究した.まず,バルーン損傷後に内膜過形成が形成され血管内腔が狭窄することを確認した.損傷後14日頃が内膜過形成は最大であった.損傷後1日後,3日後,7日後,14日後に標本を摘出しNF-kBの発現を免疫染色,Western blottingを用いて検討した.NF-kBの発現は3日後が最も大きく14日後には正常化した(第59回日本脳神経外科学会総会).次にNF-kBを抑制するとされているN-acetylcisteine(NAC)を損傷後に腹腔内投与しNF-kBの発現,内膜過形成に及ぼす効果を検討した.NAC投与群(n=9)では非投与群(n=9)に比してNF-kBの発現は抑制され,内膜過形成は抑制された.つまり内膜過形成にNF-kBが関与しており,それを抑制することで内膜過形成が抑制されることを示した(Neurol Res2001;23:731-738).さらに動脈硬化病巣への血管形成術を模倣した2回損傷モデルを用い,2回損傷で内膜過形成がより著明であることを確認し,内膜過形成には血管中膜平滑筋のtransformationが関与していることを明らかにした(第60回日本脳神経外科学会総会).また,バルーン損傷後,抗酸化剤のエタラボン投与により内膜過形成が抑制される傾向を認め,免疫染色,Western blottingにてその作用機序の検討を行っている.
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