研究概要 |
培養神経細胞および培養シュワン細胞においてシナプス小胞関連蛋白および神経栄養因子の遺伝子を導入し各遺伝子の神経伸長効果を解析し、再生軸索およびその支持機構で神経栄養因子の産生において中心的役割を果たしているシュワン細胞への遺伝子の発現効果および神経再生機構における相互作用をマーカー遺伝子に対する免疫組織化学およびウェスタンブロット法にて確認した。PC12細胞にシナプス開口分泌関連タンパク質(VAMP-2,SNAP-25A, syntaxin1A)とGFP(green fluorescent protein)の融合タンパクを発現させ神経突起の伸長効果を解析した。24時間培養したPC12細胞にGFP, GFP-VAMP-2,GFP-SNAP25A, GFP-syntaxin1Aの遺伝子をリポフェクション法を用いて導入した。導入後nerve growth factor添加培地にて72時間培養し、それぞれのタンパクを発現している50細胞において個々の神経突起長、各細胞の総神経突起長および神経突起数を計測した。また、ウェスタンブロット法にて導入したタンパクの発現を検索した。GFP-VAMP-2発現群は各神経突起長および総神経突起長においてGFP発現群に比べ有意に大きかった。一方、GFP-SNAP-25A発現群は各神経突起長では変化はなかったが、総神経突起長および神経突起数で有意に大きかった。GFP-syntaxin1A発現群については有意差を認めなかった。また、導入したタンパクの発現を全群で認めた。シナプス開口分泌関連タンパク質は小胞側にVAMP、付加する膜側にSNAP-25,syntaxinがそれぞれ存在し複合体を形成することで膜付加が可能となることが知られている。これまでにも、SNAP-25が神経突起の伸長を促進、またsyntaxin1A、VAMPは伸長に関与しているという報告はあるがいまだ不明な点も多い。今回VAMP-2およびSNAP-25A発現群ともに総神経突起長を増加させた。しかし促進様式については、VAMP-2発現群は個々の神経突起長を増加し、一方SNAP-25A発現群は神経突起数を増加することで伸長効果に寄与していると考えられた。培養シュワン細胞への遺伝子導入については現在進行中である。
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