従来、骨に対する運動や荷重といった力学的負荷が骨強度に及ぼす影響については、骨塩量の増減を指標に論じられていたが、最近、骨の主要構成成分であるコラーゲンの物理化学的特性が、骨の可塑性を規定する因子として注目されている。 本研究は、力学的負荷の増減に応じたコラーゲン架橋結合の形成の機序を分子レベルで解明することにより、加齢に伴う退行性疾患や微小重力環境下における骨強度の低下を予防し、その改善をはかる治療法の開発をめざしている。 MC3T3-E1細胞をconfluentの2週p後より、微小重力下(クリノスタット装置)、または高重力下(遠心負荷20G、40G)に72h培養し、細胞層を回収した。その結果、微小重力下においては、コラーゲンの架橋量は減少し、還元性から非還元性架橋への転換も抑制される可能性が示唆された。また、高重力下においては、各架橋形成が亢進しているのみならず、還元性架橋のの非還元性架橋への転換が促進しているものと考えられ、特に還元性架橋にしめるHLNLの割合が増加する結果、骨基質特異的に発現するDpyrの形成亢進をきたしていることから、重量負荷は石灰化基質として、質的に成熟したコラーゲン線維を形成する際に重要な因子であるものと推察された。
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