研究概要 |
経食道ドプラ心エコー図法(TEE)による肺静脈血流速波形(PVF)から算出した指標(TTVIxHR)と熱希釈法による心拍出量(TCO)の間の回帰直線の式を求め,その式からTEEによる心拍出量(DCO)を算出しTCOとDCOの関係を統計学的に分析した。心臓血管手術を予定された成人21名を対象とした。気管内挿管後,肺動脈カテーテルを留置し心拍出量測定装置に接続した。その後TEEプローベ(HP社製21369A)を挿入し,PVFを呼吸停止下に記録し,同時にTCOも測定した。各症例2-4ポイントの測定を行った。PVFから左室収縮期と拡張早期に生じる順行波のそれぞれの時間-速度積分値(TVI-S,TVI-D)と心房収縮期に生じる逆行波の時間-速度積分値(TVI-R)を計測し,TTVI=TVI(S+D-R)とTTVIxHR(TTVIと心拍数の積)をそれぞれ計算した。TCOとTTVIxHRの直線回帰分析を行い,その回帰式からDCOを算出した。TCOとDCOの一致性をBland and Altman分析を行い評価した。結果を以下に記載する。 1 62の測定でTCOの欠損は7のためn=55であった。 2 TCO(L/min)=0.002 x TTVIxHR(cm/min)+1.754という回帰式が得られた。 3 DCOとTCOの関係式は,TCO=0.96 x DCO-0.06,r=0.82,p<0.01であった。 4 Bland and Altman分析によるTCOとDCOの平均差は-0.10±0.65(L/min)(mean±SD)で,95%信頼区間は-1.4〜+1.2(L/min)であった。 以上よりPVFから測定したTTVIxHRは右心拍出量すなわち肺血流量と密接な関係があり,TTVIxHRから算出したDCOはTCOとある程度一致することが解った。
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