研究概要 |
炎症の急性期にはTNF, IL-6,IL-8などの炎症性サイトカインが産生される。そこで、静脈麻酔薬であるケタミンが、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)からの急性期炎症mediatorである炎症性サイトカイン産生に与える影響を検討した。 HUVECをLPS(Lipopolysaccharide)で刺激し、培養液中のサイトカイン(TNF, IL-6,IL-8)の濃度をELISA法にて測定した。LPS刺激によりTNF, IL-6,IL-8の濃度は用量依存性に増加した。また、HUVECを異なった濃度のケタミンと共に培養し、LPSで刺激したところ、培養液中のTNF, IL-6,IL-8の濃度はケタミンの濃度に依存して減少した。ケタミンはHUVECにおいてLPS刺激による炎症性サイトカインの産生を抑制することが明らかとなった。 次に、HUVECをLPSで刺激したときの炎症性サイトカイン(TNF、IL-6、IL-8)mRNA発現に与えるケタミンの影響をRT-PCR法にて測定した。LPS刺激によりHUVECでのTNF、IL-6、IL-8mRNA発現は増強した。しかし、ケタミンはこれらのmRNA発現増強を抑制しなかった。このことから、ケタミンはLPS刺激によるHUVECからの炎症性サイトカイン(TNF、IL-6、IL-8)産生をpost transcriptional levelで抑制していることが示唆された。 一方、炎症の慢性化には血管新生が関与し、血管内皮増殖因子(VEGF)は血管新生を制御するサイトカインとして知られている。そごで、ケタミンが、HUVECのLPS刺激によるVEGF産生に与える影響を検討した。しかし、LPS刺激によりHUVECからVEGFは産生されず、VEGFmRNAも発現しなかった。ケタミンはVEGF産生、mRNA発現に影響を与えなかった。
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