研究概要 |
麻酔薬の作用はイオンチャンネルや受容体に作用することが知られているが、そのメカニズムはいまだに解明されていない。最近、G蛋白結合受容体が中枢神経系において麻酔機序に関与しているという報告がなされ麻酔作用に大きく関与していることが明らかとなってきた。G蛋白結合受容体にはGq蛋白結合受容体だけでなくM2受容体やアドレナリンβ2受容体を始めとしたGi及びGs蛋白結合受容体も多く存在し、これらは麻酔薬による不整脈や心筋抑制作用をはじめとした作用に大きく関与していると考えられている。 現在まで、私はアフリカツメガエル卵母細胞発現系を利用してメタポトロピックグルタミン受容体、セロトニン受容体、M1受容体、サブスタンスーP受容体といったGq蛋白結合受容体に対する麻酔薬の作用を検討してきた(Minami et al.,1997,1997,1998、2002)。Gq蛋白結合受容体はアフリカツメガエル卵母細胞発現系などでPLCを介した細胞内Ca^<2+>の変動により容易に解析できるが、しかし、M2受容体やアドレナリンβ2受容体などのGi及びGs蛋白結合受容体はKchannelやアデニレートシクラーゼに作用しており、PLCを介した細胞内Ca^<2+>の変動を利用した解析ができないため、麻酔薬のM2受容体やアドレナリンβ2受容体に対する詳しい検討は行われていないのが現状である。そこで、今回の私の研究においては、(1)GiとGqと間でキメラG蛋白RNAを新たに合成し、このキメラG蛋白RNAとGi蛋白結合受容体RNAを同時にアフリカツメガエル卵母細胞に注入発現させて、Gq蛋白結合受容体と同じようにPLCを介した細胞内Ca^<2+>の変動を利用した、新しいGi蛋白結合受容体の薬理学的解析方法を確立した(2)本年度はこの方法を用いてGi蛋白結合受容体ムスカリン受容体M2に対する麻酔薬ハロセンの作用を電気生理学的に解析した結果、ハロセンはM2受容体を抑制することが明らかとなった(現在投稿準備中)。現在、これらの実験系を利用して鎮痛薬トラマドールのM1,M2への影響を検討している最中である。 (Shiraishi et al.,2001)以上によりGi蛋白結合受容体の新しい薬理学的解析方法を用いた麻酔薬のM2への詳細な作用解析を行い、Gi蛋白結合受容体も麻酔薬のターゲットになりうることが示唆された。
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