研究概要 |
子宮内膜症の発症機序として腹腔内に逆流した子宮内膜が起源であるとする内膜移植説が有力であるが、内膜症がすべての女性に発症しない理由は不明である。サルでは2,3,7,8-Tetrachlorodibenzo-p-dioxin(TCDD)が内膜症発症に関与するとされるが、ヒトでははっきりしない。そこで我々はヒト内膜症とTCDDの関連解明を調査目的とした。内膜症患者と非内膜症患者でTCDDの内膜に対する作用・影響が異なり、腹腔内に移植された子宮内膜が異なるという仮説を考え、腹腔鏡を施行する成人女性から承諾を得て子宮内膜を採取し、受容体aryl hydrocarbon receptor(AhR)、共役因子AhR nuclear translocator(Arnt)、Heat shock Protein 90(HSP90)、反応遺伝子cytochrome P-450 1A1(CYP1A1)、CYP1B1、p62(dok)等に関してヒト子宮内膜における発現をライトサイクラーを用いた定量的reverse transcription-polymerase chain reaction(RT-PCR)法で調査した。これらの遺伝子はすべて月経周期を通じて発現し、月経周期を通じてほぼ一定だが、p62(dok)は増殖期に高値であった。内膜症患者と非内膜症患者との比較では今のところAhR,Arnt,CYP1A1,CYP1B1,p62(dok)等に違いを認めていないが、p62(dok)のみ重症例で高い傾向にあった。喫煙者と非喫煙者との比較ではAhRは喫煙者で低い傾向にあった。以上、今のところ仮説を支持する結果は得られていないが、子宮内膜におけるAhR等のダイオキシン関連遺伝子発現を確認し、TCDDが子宮内膜に影響を及ぼす可能性を示した。今後、症例を増やした後に発表したい。
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