研究概要 |
我々はプロラクチン産生細胞(PRL細胞)の増殖調節機構を構成するエストロゲン受容体(ER)系とmitogen-activated protein kinase(MAPK)系およびcyclic AMP/protein kinase A(cAMP/PKA)系との間の相互作用について薬理学的手法を用いて検討した。 1.estradiol(1nM)の投与によるPRL細胞の増殖促進に対するER antagonistである4-hydroxy tamoxifen, ICI182, 780の抑制効果の至適濃度は各々5nMと10nMであった。 2.insulin(50ng/ml)投与による増殖促進に対するMEK 1 inhibitorであるPD98059, U0126の抑制効果の至適濃度は各々50uMと1uMであった。 3.forskolin(1uM)投与による増殖促進に対するPKA inhibitorであるKT5720, H89の抑制効果の至適濃度は各々0.2uMと1uMであった。 4.一つの増殖促進因子の効果に対する他の増殖促進因子の情報伝達系の阻害剤の作用を調べた. (1)estradiolによる増殖を抑制したER antagonistはinsulin, forskolinによる増殖をも抑制した。 (2)forskolinによる増殖を抑制したPKA inhibitorはinsulin, estradiolによる増殖をも抑制した。 (3)insulinによる増殖を抑制したMEK 1 inhibitorはforskolin, estradiolによる増殖をも抑制した。 5.positive controlとしてのprogesterone receptor antagonist(0.1uM), p38 MAPK inhibitor(10uM), PKC inhibitor(0.1uM)といった阻害剤の投与ではestradiol, insulin, forskolinによる増殖は全く影響を受けなかった。 以上よりPRL細胞の増殖調節機構を構成するER系とMAPK系およびcAMP/PKA系との間に相互作用が存在することが示唆された。
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