研究概要 |
細胞毒である抗癌剤を用いた従来の卵巣癌治療法には原理的に限界があり,新しい治療法を開発する必要に迫られている.光線力学的治療(Photodynamic therapy:PDT)は,腫瘍親和性光感受性物質が光線照射により生じる酸素化反応とこれに基づく細胞障害で腫瘍細胞を選択的に治療するものである.単独では抗腫瘍効果を呈さない光感受性物質は,抗癌剤とは異なり正常細胞との機能的な差で,より選択的に腫瘍細胞に集積し光励起によりはじめてその効果を発揮する.本研究はこのPDTを,婦人科悪性腫瘍の腹膜播種性病変に対する治療法の一つとして確立することを最終目標として,臨床応用に向けて必要な基礎実験データを蓄積することにある. in vitroにおけるPDTによる癌細胞増殖の抑制の評価をするために,まず光感受性物質porfimer sodium(PHE)を用いた基礎研究を行った.培養細胞のPHE取込量を測定することができるように,未知濃度の溶媒のPHE濃度を簡便に算出できる標準直線を作成した.各濃度のPHEの吸光度の吸収スペクトルを測定し,特定波長(360〜390nm)で吸収スペクトルのpeak値がPHE濃度の増加に伴い上昇することより標準直線を作成した.これにより培養細胞培地に一定量のPHEを投与した際に,培養細胞への取込量が算出可能となった.培養細胞によるPDTの成績の違いが,細胞自体の取込量の違いにより生じる可能性があるため,各腫瘍細胞の成績を算出する際の一つの指標とすべきである.現在,卵巣癌細胞(A2780とシスプラチン抵抗性株A2780^<CP>),子宮内膜腺癌細胞,子宮頚癌細胞にそれぞれPHE投与後,レーザー照射を行い,その細胞増殖の程度をチミジンの取り。0込みを利用した方法で増殖曲線から評価し抗腫瘍効果を検討中であるが,この際にもPHEの細胞自体への取込量の違いも考慮したい.
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