研究概要 |
3種のヒト卵巣癌細胞株HTBOA, HNOA, AMOC-2における遺伝子発現をNorthern blot, RT-PCR法により解析した.それらの細胞生物学的特性を解析するためにヌードマウスを用いたヒト卵巣癌腹水モデルを作成した。その結果,AMOC-2では、血管新生因子であるVascular endothelial growth factor (VEGF)の発現はみられなかったが、E-Cadherinは発現していた。この細胞はIn vivoでは腹水産生がみられず、単一の大きな腫瘍を腹腔内に形成した。VEGFを発現するHTBOAとHNOAはマウスに著明な腹水を形成した。HNOAはE-Cadherinの発現がみられず早期に腹膜播種病変を形成した。これらの結果からVEGFは卵巣癌の腹水産生に関与し、E-Cadherinは腹膜播種病変の形成に関与していることが示唆された。さらにCMVプロモーターをもつpcDNA3に組み込んだVEGFのアンチセンスプラスミドを作成しHTBOA細胞に遺伝子導入した。その結果、腹水産生を短期的に抑制することができた。 さらにHTBOAの分子生物学的特性を解析するために、VEGFレセプターのflt-1,KDRの発現を調べた。HTBOAはflt-1を発現しており、VEGFアンチセンスにより増殖抑制がかかることよりVEGFのautocrine loopの存在が示唆された。 また、HTBOAにおけるVEGF発現のホルモン調節についても検討した。HTBOAはゴナドトロピン放出ホルモンレセプター(GnRH-R)を発現しており、GnRHアゴニスト投与による腹水産生の抑制効果をマウスモデルを用いて検討した。その結果、GnRHアゴニスト投与により腹水産生の抑制が見られた。これが、GnRH-Rを介した直接作用かエストラジオールの抑制によるものかは現在検討中である。
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