研究概要 |
前年度の研究に引き続き、癌が基底膜を破壊し、間質を溶かし、浸潤していき、転移していく過程において、間質の変化やそれに伴う炎症細胞の浸潤は重要な要素である。この癌間質反応に注目して、(1)間質の線維化反応をおこすことが知られている線維芽細胞、筋線維芽細胞、マクロファージ、などからどの様な因子が出て、間質の線維化がおこっているのか、逆に、癌細胞や、間質細胞がMMPsなどを発現し、どの様に間質を溶解し浸潤していくのか(2)癌が浸潤している周囲に集まる炎症細胞はどの様な因子をだしているのか、(3)血管新生因子はどの細胞に発現がみられ、癌血管とどの様な関係があるのかを頭頚部癌病理標本(外科切除標本)を使用し、免疫染色、in situ hybridization法などの手法を使って検討した。 本年度の研究実施 頭頚部癌における血管新生因子の発現と間質細胞の役割についての検討 1)血管新生因子であるVEGFとその受容体のflt-1,flk-1,発現や,他の血管新生因子EGF, TGF, HGF, PDGF, Angiopoietin-1との発現についても、免疫染色、ISH法を用い、それぞれの蛋白、mRNAの発現を観察した。さらにVEGF陽性間質細胞に焦点をあて、この間質細胞が何であるかを形態的、免疫組織学的に検討したところ、癌胞巣におけるVEGFの蛋白発現は24.1%であったが、VEGF陽性間質細胞は対象全症例で認められた。VEGF陽性症例は血管密度も高く、統計学的にも有意差を認めた(P=0.0002)。また、癌胞巣におけるVEGFの蛋白発現率はVEGF陽性間質細胞数は正の相関がみられた(P<0.0001)。頭頸部扁平上皮癌において癌細胞だけでなく癌周囲の間質細胞に発現されるVEGFは局所における血管新生に深く関与していることが示唆された。現在、Multi-Labeling Subtraction Immunostaining法を用いてどの細胞が、血管新生に関与しているのか、データの解析及び得られた結果の意義の検討を行っている。
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