我々はこれまで、喉頭扁平上皮癌において組織学的悪性度が高い症例、および腫瘍の進展が高度な症例に、癌抑制遺伝子産物の一つであるRbタンパク(pRb)の発現消失が高率に認められ、またpRb発現消失例では再発率が高く再発予測因子になり得る可能性があることを明らかにしてきた。臨床的に、頭頚部早期癌、特に舌癌において、頚部リンパ節転移の有無が予後を大きく左右する重要な因子であり、転移の予知因子の解明が必要である。早期舌癌において、治療前には認められない頚部リンパ節転移が臨床経過中に出現する、いわゆる遅発性頚部リンパ節転移の発生頻度は30%前後と高率である。そこで、手術切除標本を用いて病理組織学的検討を行い、原発巣と遅発性リンパ節転移との関係について検討した。腫瘍側因子として、角化、核異型、Ki-67labelling indexを、宿主側因子としては腫瘍の浸潤様式、浸潤深度、およびtype IV collagenの発現様式を検討した。その結果、組織学的悪性度と遅発性リンパ節転移の間に相関関係が得られた。また、癌の浸潤様式および浸潤の深さが悪性度を最もよく反映していると考えられた。Ki-67、type IV collagenの免疫染色も予後を予測する上で有用であると考えられた。これらは治療法選択や予後の推測にあたっては重要視すべき事項であると考えられた。今後、pRbも含め癌抑制遺伝子についても検討が必要であると思われる。
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