研究概要 |
抗癌剤多剤耐性メカニズムにおいて我々は、アポトーシス抑制遺伝子であるBcl-xL蛋白の過剰発現が重要な役割を果たしていることを示した。さらにBcl-xLがcytochrome Cの核から細胞質への移行を阻害し、アポトーシスを抑制するというメカニズムを報告した。加えて、caspase-3がPKC-delta、PKC-theta、PARP、DNA-PKなどの蛋白をある特定部位で切断することにより、切断された蛋白質が活性化され、アポトーシスが引き起こされ、Bcl-xLがcaspase-3の活性化を阻害することを明らかにした。 このようにcaspase-3はこのシグナル伝達の中心となる蛋白であるが、PARPなどの基質となる蛋白をある特定部位で切断し、その断片(catalitic fragment)は新たな活性をもちアポトーシスを起こす。現在までにcaspase 3の基質として数々の蛋白が明らかにされてきた。 今年度の研究で、我々はPKC familyのうちPKC-delta,theta,muが共通した特定のアミノ酸配列を有し、caspase 3の基質となることを示した。さらにPKC-delta,thetaのcatalitic fragmentを細胞に導入したところ、アポトーシスが引き起こされた。 一方、PKC-muのcatalitic fragment自身はアポトーシスを引き起こすことはなかったが、DNA damageによる細胞のアポトーシスに対する感受性を亢進させ、またcaspase-resistantであるPKC-muのmutantはDNA damageが引き起こすアポトーシスを部分的に抑制する事が判明した。
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