研究概要 |
蝸牛血管条におけるエンドセリンの局在については、Jinnouchiらが、モルモット血管条辺縁細胞にエンドセリン-1(ET-1)が局在していることを、Franzらがラットおよびモルモット血管条辺縁細胞と中間細胞にET-1およびET-3が局在することを光顕免疫細胞化学で示し、ETが内耳液の量やイオン組成の調節に関与する可能性について報告しているが、血管条におけるエンドセリン受容体の局在や、血管条におけるET産生の有無ならびに聴覚中枢路におけるET局在についての報告はなされていない。今回正常マウスとモルモットを用い、血管条ならびに聴覚中枢路(中脳)におけるET-1,ET-3およびET受容体の一つであるETA受容体局在に関する光顕免疫細胞化学と免疫電顕を施行した。免疫電顕でマウス血管条におけるET-1,ET-3の免疫陽性反応は中間細胞の粗面小胞体、ゴルジ装置および細胞膜に加えて中間細胞に相対する辺縁細胞に認められた。ETA受容体の免疫陽性反応は辺縁細胞膜と中間細胞膜に局在した。また光顕免疫細胞化学ではモルモット中脳下丘レベルにおけるET-1,ET-3の免疫陽性反応は聴覚中枢路である蝸牛神経核に認められた。 近年ETによるNa+・K+-ATPase活性の抑制や亢進が他器官で報告されているが、今回の免疫細胞化学的研究では中間細胞の粗面小胞体・ゴルジ装置系で産生されたETが、辺縁細胞膜のETA受容体を介して辺縁細胞膜のNa+・K+-ATPase活性を修飾していることを示唆している。また聴覚中枢路におけるET局在については、末梢神経やCNS神経で報告されているように神経伝達物質の調節因子としての作用が推察される。
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