研究概要 |
12週齢のC57BL/6マウスから調整した網膜cDNAおよび脳cDNAを用いて網膜cDNAから脳cDNAをサブトラクトするcDNAサブトラクションハイブリダイゼーション法を行い、濃縮された網膜cDNA、および脳cDNAをプローブとしてマウス網膜cDNAライブラリーをディファレンシャルハイブリダイゼーション法によってスクリーニングした。候補cDNAクローン(平均インサートサイズ約2kb)を単離し、部分的に塩基配列を決定した。Transducin,opsin,retinal S-antigen,cyclic-GMP PDE-β,-γなどの既知の遺伝子を除いて数個の新規cDNAクローンをさらに解析している間に、1つはevt-1遺伝子であることがわかり、視細胞に発現していて常染色体優性家族性滲出性硝子体網膜症の候補遺伝子ではないかとの報告がなされ、また、別の一つはLeber先天盲の原因遺伝子として報告されたAIPL1遺伝子と高い相同性を持つAIP遺伝子であることが判明した。残りのクローンの一つは、網膜と肝臓に豊富に発現していた。その塩基配列から予測されるアミノ酸配列は膜貫通構造をもっており、Dp1遺伝子にコードされるTB2と非常に高い相同性があった。また、In situ hybridizationの結果、神経節細胞層に強い発現が認められ、内顆粒層、外顆粒層にも弱い発現が認められた。ポリクローナル抗体を作製し免疫組織化学をおこなったところ神経節細胞に反応が認められた。膜貫通構造をもつ蛋白であることからBFPとの融合蛋白を形成させ、293細胞を用いて蛋白の局在をみたところ細胞膜や核膜ではなく細胞内小器官にシグナルが認められた。さらに、この遺伝子をRadiation Hybrid Panelを用いてマウス10番染色体にマッピングすることができた。今後は、この遺伝子を欠失させるか変異を導入したマウスを作製し、この遺伝子の網膜における役割を解明し遺伝性網膜変性疾患の原因遺伝子となりうるか検討したいと考えている。
|