研究概要 |
本年度は、ラット網膜虚血再灌流障害モデルにおけるアポトーシス関連遺伝子発現の組織学的検討(昨年度)の確認のためin situ hybridization法による検討、発現細胞の種類の同定のために二重染色による研究を中心とした。 1.再灌流後,12,24,48時間の3点でin situ hybridization法用にブロックを作成し、Bcl-2,Cytochrome C,Caspase 3の発現を再検討した。免疫組織化学的検討と同様に、Bcl-2の発現はグリア細胞であるアストロサイト及びミューラー細胞で発現が認められ、これらグリア細胞はTUNEL陽性細胞を取り囲むように突起を伸ばしており、アポトーシスの抑制に関与していると考えられた。一方、Cytochrome C,Caspase 3はアポトーシスを起こしている網膜神経節細胞層、内顆粒層細胞層で発現を認めた。 2.1で得られた情報をもとに網膜虚血再灌流障害において遺伝子レベルでの発現を検索するため、RT-PCRによる、発現の経時変化を検討した。その結果、Bcl-2の発現は12時間から24時間でピークとなっていた。Cytochrome C, Caspase 3に関しては、9時間から12時間にピークを認め虚血再灌流モデルにおいてもアポトーシスとの関連が示唆された。 3.更に二重染色法を使ってbcl-2,cytochrome C,caspase 3の発現がどの細胞に認められるかを確認した。細胞の種類の確定には、s-100,HPC-1,Calbindine等を用いbcl-2とs-100、cytochrome C,caspase 3とHPC-1で同一細胞での発現を確認した。以上の結果より、ラット網膜虚血再灌流障害によりアポトーシスが生じていること、またその関連遺伝子としてCytochrome C,Caspase 3の関与、及びグリア細胞におけるBcl-2の発現によるアポトーシスの抑制が行われていることが示唆された。
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