研究概要 |
黄斑部には杆体細胞が少なく、視機能に重要な黄斑部局所での桿体細胞の役割については、未だよく知られていない。そこで我々は自作の局所ERG装置を用いて、黄斑部局所における桿体成分の検出を試みている。今回は暗順応時間を変えて検討してみた。 方法:対象は20代の器質的眼疾患のない3例3眼(屈折異常-4D以内)。錐体系の局所ERG装置(眼紀50:437-442、1999年)に観察装置に近赤外線カメラを組み込み、眼底を観察しながら刺激,記録できるように改良した。5分間の明順応(600cd/m^2)をした後に,背景光をoffの状態で青色光(470nm)の5°スポツト刺激(1.5cd/m^2,on=10msec)で黄斑部局所ERGを記録した(200〜400回加算平均)。その後暗順応を行い,30分後,60分後の時点において同様の条件で記録した。 結果:明順応直後に刺激したものは,non-recordableであった。暗順応30分後では,full-field ERGで得られる杆体成分に類似した波形の頂点潜時70〜90msec,振幅1〜2μVの陽性波が記録された。暗順応60分後でも黄斑部では同様の波形が得られ,視神経乳頭上ではnon-recordableであった。 結論:暗順応で振幅が増加することより、以上の条件で記録した黄斑部局所ERGは桿体成分である可能性が高い。また30分と60分の暗順応では振幅に大きな差がなく、前者の条件で記録すればよいと考えられた。更に至適条件を確立していき、黄斑部疾患における桿体細胞の機能変化の解明に役立てる方法と考えている。
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