小児固形悪性腫瘍で最も多い疾患である神経芽腫では従来からその悪性度を規定する遺伝子変化(N-myc遺伝子の増幅、1番染色体短腕の欠失、DNA ploidyの変化、等)の研究がさかんに行われてきた。当施設においてもこれらの遺伝子変化の解析を行い、その結果に基づいて治療を行ってきた。しかし、その遺伝子変化の発症機構は、まだ未知の分野である。本研究の目的は神経芽腫の種々の遺伝子変化と染色体維持機構の関連の解析により神経芽腫の発症機構、及び多様なbiologyの原因解明にある。平成12年度に神経芽腫の組織検体30例に対して新しい検索手法としてReal Time PCR法を用いて遺伝子変化の検索(N-myc遺伝子の増幅、17q gain)を行った。その結果、N-myc遺伝子の増幅に関しては2倍からの測定が可能であり、従来のサザンブロット法による検討結果と比較してより高感度で正確な結果を得ることができた。また、17q gainに関しても2倍からの判定が可能であり、2倍以上を示した症例は、2倍未満の症例に比較して有意に予後不良を示した。このことから、Real Time PCR法は、神経芽腫の予後に関わる遺伝子の数的異常を検索手段として有用であり、その迅速性、簡易性から今後の検体の予後因子検索の手法の第一選択となることが予想される。染色体維持機構に関わる遺伝子群の検索では、約20例の検体に対してRad51遺伝子の発現を半定量的PCRにて検討した結果、検体間においてその発現に差異を認め、N-myc遺伝子増幅では、発現が低い傾向にあることが示された。今後、Real Time PCR及びウェスタンブロットによる詳細な解析を続行していく予定である。
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