研究概要 |
膵胆管合流異常症における発癌機序を解明する目的で,ハムスターを用いた胆嚢癌の発癌モデルを作成し,その発癌過程における胆汁酸(ケノデオキシコール酸)および膵酵素(トリプシン)の影響を組織学的および免疫組織化学を用いて検討した. 胆嚢発癌モデルの作製では高率にかつ確実に胆嚢癌を得ることができた.発癌率の調整は今後の課題であるが,発癌過程における様々な環境因子や薬剤の影響を検討するには価値のある実験モデルと考える.今回胆汁酸および膵酵素であるトリプシンは誘発胆嚢癌の発癌過程においてプロモーターとしての役割を有している可能性が示唆された.また,その組織学的検討から誘発胆嚢癌は乳頭型および管状型腺癌を呈し,周囲への浸潤性も多々認められたが,胆汁酸および膵酵素下の環境ではより浸潤性の強い組織像を呈しており興味深い結果であった. さらに免疫組織染色を用いて誘発胆嚢癌および背景胆嚢粘膜の細胞増殖活性を検討したが,胆汁酸および膵酵素の環境下では組織学的に正常と思われる胆嚢粘膜においても有意に細胞増殖活性が亢進しており,発癌における背景粘膜としての可能性を有していると考えられた. 以上の結果について第24回日本膵管胆道合流異常研究会におけるシンポジウムにて発表した.
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